[屋上] 琴葉 茜 :
[屋上] 琴葉 茜 :
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ふう」
[屋上] 琴葉 茜 : あー
[屋上] 琴葉 茜 : 結局ここかあ、ここはこの季節辛いんやけど
[屋上] 琴葉 茜 : まあ
[屋上] 琴葉 茜 : ええやろ、今日は
[屋上] 琴葉 茜 : 鞄を漁って、すっと
[屋上] 琴葉 茜 : 小さな箱と、も一つ箱を
[屋上] 琴葉 茜 : ジッ、と
[屋上] 琴葉 茜 : 擦れば茜色に、火が
[屋上] 琴葉 茜 : その小さな火種を
[屋上] 琴葉 茜 : もう一つの箱から取り出した筒に移せば
[屋上] 琴葉 茜 : ふわりと
[屋上] 琴葉 茜 : 煙が、冬空に舞っていく
[屋上]
琴葉 茜 :
「…ふぅ、やーっと落ち着ける」
もくもくと、煙を吸い、吐いて
[屋上] 琴葉 茜 : こんなん、人と一緒じゃ困りますさかい
[屋上] 琴葉 茜 : 溢れる灰は、そのまま灰皿に
[屋上] 琴葉 茜 : ふぅ
[屋上]
琴葉 茜 :
「…悪いことしたなぁ」
携帯を覗く
[屋上]
琴葉 茜 :
アヤ(3)
ナンジョー(2)
パパさん(12)
二号(3)
[屋上] 琴葉 茜 : ずらりと並ぶ通知に苦笑いしつつ
[屋上] 琴葉 茜 : 読む事はなく、仕舞い
[屋上] 琴葉 茜 : 「…今日は小遣い稼ぎの気分でも無いわな」
[屋上] 琴葉 茜 : ぷは、と煙をまた吐いて
[屋上] 琴葉 茜 : ……今日思うのは、意外と慕われてた事やけど
[屋上] 琴葉 茜 : 二人が知っとるウチは、ま
[屋上] 琴葉 茜 : 結局優等生の、日和見風見鶏でしか無いわけで
[屋上] 琴葉 茜 : ウチは、こんなもんです
[屋上] 琴葉 茜 : 不良で不法な悪ガキですから
[屋上] 琴葉 茜 : あんま気にせんで、かんにんな
[屋上] 琴葉 茜 : …まあ聞いてないやろけど
[屋上] 琴葉 茜 : …
[屋上] 琴葉 茜 : 灰を捨てて、三分の一が燃え尽きたのを見て
[屋上] 琴葉 茜 : そのままタバコの火を消して、仕舞う
[屋上] 琴葉 茜 : …どーすっかなー
[屋上] 琴葉 茜 : 探されたら嫌やな
[屋上] 琴葉 茜 : …まあええか
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「おいおいおい何やってんだこら」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…んお」
[屋上] 琴葉 茜 : 「あ、ども、センセ」
[屋上] 琴葉 茜 : にっこりと手を振る
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「単独行動……の方はいいとして煙草はまずいだろ煙草は」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「どもじゃねえだろ少しは隠せ」
[屋上]
琴葉 茜 :
「…おんや、なんか勘違いしとりません?」
おーっと、おっと
[屋上] 琴葉 茜 : …しもーたな、ハハ
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「そんなしょぼい隠しかたしても匂いでばれるわ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ちぇ、いつもはしっかり香水とかしとるんですけどね」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「あからさまに香水の匂いしたらそれこそ怪しいんだよ……じゃなくてだな」
[屋上]
琴葉 茜 :
「勘のいいセンセや、まったく」
困ったもんや…
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「あー……なんか悩み事でもあんのか」
[屋上] 琴葉 茜 : 「そうでも無いですよ、貰い物とかよくしますから、誰も気にしません」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ただの趣味です」
[屋上] 琴葉 茜 : 「悪いことする人、大概理由ないでしょ?」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「……いやあるよ、特にお前みたいなの」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「構ってほしいってやつだな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…構って欲しかったらもうちっと煽りますよ」
[屋上]
琴葉 茜 :
「それこそ、傷でも付けときゃわかりやすいですしね?」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「構ってほしくなかったらもっとうまく隠すもんだ。お前頭いいしできるだろ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : はあ
[屋上] 琴葉 茜 : むう
[屋上] 琴葉 茜 : 「…構って欲しかったとしても、ウチは自分でもうやっとります」
[屋上] 琴葉 茜 : 「幸い、効率の良い構われ方もあるんで」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「じゃあもうこんな真似はやめとくこったな。今日は見なかったことにしてやるから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「代わりがあるならええんですけどね」
[屋上]
琴葉 茜 :
「それより、見なかったことにずっとする方法とか無いです?」
にこりと
[屋上] 琴葉 茜 : 「別に、ウチ優等生らしいんで、センセが黙ってくれたら困らせませんから」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「あのなあ、私が黙ってたっていずれバレるんだよ。ココアシガーでも吸ってろ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「全員にバレたら潮時って事で首でも括りますよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチは別に、今のままやれるならそっちで良いんで」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「そういうことにならないためにお目こぼししてやるってんだろうが…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「あんま、そういうの」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…はぁ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチは、好きでやってるんです」
[屋上] 琴葉 茜 : 「悪かろうが、バレようが、大人になる時困ろうが」
[屋上] 琴葉 茜 : 「今が一番マシですわ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「子供過ぎやしないかいお嬢ちゃん?つーか先公まえにしてふてぶてすぎだろ。私の子供の時ですらもうちょいかわいかったわ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「良い大人の例が居ないやからしゃーないやろ〜」
[屋上] 琴葉 茜 : ごろんと転げて
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「つまり優秀な反面教師が近くにいるってことじゃないか」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 横に転がって
[屋上] 琴葉 茜 : 「反面するってんな、反対側わからんとしゃーないですよ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「そいつのやってることをやらないってだけさ、簡単だろ?」
[屋上] 琴葉 茜 : 「それに今もそんなもんしりゃせんですしね」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…それでどーなります?生憎その代わりなんかしりゃしませんわ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「本人のやる気がねえのはどうにもならんなこりゃ、私も殴られてもやめなかったもんな……」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「あー……家の問題だったりするか?」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…堪忍な、ウチのオトンもオカンもマトモな仕事しとらんかったさかい」
[屋上] 琴葉 茜 : 「センセは良い人かもやけど、しょーじきよーわからんし」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「だよなぁ…いやあやまんな、お前は全く悪くねえから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「いやあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「そこそこそんなオトンとオカンにも負い目はあるんで、そーじゃなきゃそう呼びませんよ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「じゃあそんなオトンとオカンみたいにお前さん自身も許しちゃやれねえかい?」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ん…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「死んでからやった許せたから、ちょっちハードル高いなあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチはまだなんか」
[屋上] 琴葉 茜 : 「そーいう踏ん切りは付きませんわ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「そっかぁ……難しいな、でもなあ教師は神父じゃねえからさ、はいそ―ですかって見放すわけにもいかねんだわ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…んー」
[屋上] 琴葉 茜 : 「じゃあやっぱ」
[屋上]
琴葉 茜 :
「試してみた方がええんかな、許せるか」
立ち上がって
[屋上] 琴葉 茜 : そのまま、薄い鉄のフェンスをぼーっと見つめる
[屋上]
蕪羅亭 魔梨威 :
「あーやめやめ、報告とかそういうんじゃねえから」
わきの下に腕を回して止める
[屋上] 琴葉 茜 : 「ん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「あー」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ここじゃ迷惑か…」
[屋上] 琴葉 茜 : 振り返って、くすりと笑う
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「まあ今この瞬間やったら私は首になるわな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「それもそー」
[屋上] 琴葉 茜 : 「あはは、堪忍なー、センセ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「それに寂しいだろ、こんな教師一人が看取りなんてさ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「贅沢なもんでしょ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「オトンもオカンも、看取ったのはウチですさかい」
[屋上] 琴葉 茜 : 「それと比べたら、良いもんですけど」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ま、それはそれとして、センセが居なくなるんは」
[屋上]
琴葉 茜 :
「みんな困るなあ」
ケラケラ、笑ったまま
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「そりゃ自分の娘に看取られるなら贅沢だろうけど、縁もゆかりもない教師だぞ?」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「私は今日やったことといい多分生徒にも好かれてないし困りゃしないさ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ほおん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ま、どっちでもええです」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチからしたら贅沢でしたわ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「お前なあ……そうだ、自殺したら地獄行きらしいぜ。死んでも辛い目にあいたくないだろ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…地獄なあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なんかまあ、わからんもんです」
[屋上] 琴葉 茜 : 「でも、あんまりそういうのは考えへんですよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「神様とか信じてたら、行って良いモンやないんです?」
[屋上] 琴葉 茜 : 「みんなの為に地獄なんてあったら、ウチみたいなんでパンクしますよ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「はぁ……ここだけの話、予定説ってのがあってな。善人悪人に関わらず地獄行きかどうかは最初から決まってるんだとさ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ほへえ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「じゃあ、ウチがこんなんなんも、神様が決めちゃったんです?」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「その説を鵜呑みにすればな。人間には想像も及ばない神の偉大な計画の一部に過ぎないんだとさ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ふうん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なんだか、夢のない話ですわ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「だから人間は自由意志で救われうる!良いことしよう、悪いことしちゃだめ!ってなったんだが……夢見てみないか?」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…夢見ですか」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチはあんまり夢みたい気分でもないですよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なんか、素敵やお嫁さんー、とか素敵な大人ーって」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ならそうに思えへんしなあ」
[屋上] 南条光 : 屋上に向かって、駆けていく足音。
[屋上] 南条光 : …………っ!
[屋上] 南条光 : 「茜さん!」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…んお」
[屋上]
琴葉 茜 :
「…ども〜」
笑みは作り直して
[屋上] 琴葉 茜 : ケラケラではなく、にこり、少しだけ
[屋上]
蕪羅亭 魔梨威 :
「おっと私の役目は終わったみたいだな、それじゃ」
光の来た道を下っていく
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : なんや、帰るんですね
[屋上] 琴葉 茜 : 「さよーなら、センセ」
[屋上]
蕪羅亭 魔梨威 :
「おう、友達大事にしろよ」
振り返り笑顔をみせる
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 友人か
[屋上] 琴葉 茜 : ウチになあ
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「っと」
[屋上] 琴葉 茜 : 「南条は入れ違いやなぁ」
[屋上]
南条光 :
「……………」
早とちりした。ミスった気がする。
[屋上] 南条光 : 「…そうみたいだね」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ああそうや」
[屋上] 南条光 : 「茜さんの事、ちょっと気になってさ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「待たせたったなあ、ちょっちなあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 南条光 : 「……」
[屋上] 琴葉 茜 : 今日は皆んなお節介さんやなあ
[屋上] 琴葉 茜 : 「…何でそー思うん?」
[屋上] 南条光 : 「茜さん、今日最初会った時から……ちょっと様子が変だったから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…んん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「………んん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…そーか」
[屋上] 南条光 : 「……話、聞ける事がもしあるなら、聞きたいなって」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…話、なあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…まー」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ええか」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ちょっち暇つぶしや」
[屋上]
南条光 :
「……うん」
その言葉を聞いて少しだけ、顔がほころぶ。
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチなあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「家あんま好きちゃうから、いっつも学校で隠れて過ごしとるんよ」
[屋上]
南条光 :
「うん」
まっすぐ見て、聞く。
[屋上] 琴葉 茜 : 「それもまあ自業自得なんやけども」
[屋上] 琴葉 茜 : 「まあ、なんやろ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「オトンもオカンもウチが殺したから、あんま家にいると落ち着かんし」
[屋上] 南条光 : 「…うん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なんつーかなあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「生々しいっちゅーか、感覚が残っとるし」
[屋上] 琴葉 茜 : 「割と酷いことされたのに、罪悪感もあるし」
[屋上] 琴葉 茜 : 「やってられへんのよな、家は」
[屋上] 琴葉 茜 : 「んでもな、困ったことにバレたわ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「だからそろそろ辞めへんとやけど、辞めて何するかもあんまいー方法無いんですわ」
[屋上] 南条光 : 「うん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「周囲の大人頼れとかよー言うけど」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチのオトンもオカンも絶縁されとるから親族とか居らんし」
[屋上] 琴葉 茜 : 「他に仲良い大人は、一応お金の関係やから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「まあなんか、頼るんでもないし」
[屋上] 南条光 : 「……うん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なんでまあ、さっさと首括るかなんかするか」
[屋上] 琴葉 茜 : 「まあ、そういうのせんとなーって」
[屋上] 琴葉 茜 : 「つっても死ぬとかしか思い浮かばんのやけど」
[屋上] 琴葉 茜 : 「むかーし妹もおったんやけど、あっちはお爺とお婆が大事に育てとったし」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチが邪魔したら悪いからなあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「まあ、そんでもお金はあるから色々やれるっぽいんやけど」
[屋上] 琴葉 茜 : 「どうしような」
[屋上] 琴葉 茜 : にこにこしたまま聞いてみる
[屋上]
南条光 :
殺した、その言葉がずっと引っ掛かっている。
あまりにも強い、言葉だったから。
[屋上]
南条光 :
一瞬頭が白く、なりかけた。
そう言った意味の重さを、感じ取ったから。
[屋上]
南条光 :
……でも、しっかり受け止めなきゃ。
[屋上] 南条光 : ………いや、受け止めたいんだ。
[屋上] 南条光 : …受け止めるんだ。
[屋上] 琴葉 茜 : 「っと」
[屋上] 琴葉 茜 : 「そういや、こう言う質問はあんまするもんでも無いもんな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「オカンに聞いた時もすんごい困られたし…」
[屋上] 南条光 : 「…どうしたの」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ん?」
[屋上] 琴葉 茜 : 「どうしたって?」
[屋上] 南条光 : 「こういう質問あんまりするもんじゃないって、言われたから」
[屋上] 南条光 : 「茜さん、特に変な事言ってないから。少し気になったんだ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ふうん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「オカンは、オトンが死んだ時一緒に同じ事聞いたけど」
[屋上] 琴葉 茜 : 「何も聞きたくない!って怒られてもうたんや」
[屋上] 琴葉 茜 : 「まあ、やから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「良くないやろ?」
[屋上] 南条光 : 「……そっか」
[屋上]
南条光 :
「あたしは……」
[屋上] 南条光 : ─────────
[屋上] 南条光 : ──「大丈夫だよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「……」
[屋上] 琴葉 茜 : 「そか」
[屋上] 琴葉 茜 : 「やさしいな」
[屋上] 南条光 : 「茜さんの言いたい事、聞いてるだけだから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「言うても」
[屋上] 琴葉 茜 : 「まあ大体言ったんですわ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチ、そろそろ死んだ方がええかなって」
[屋上] 琴葉 茜 : 「よー、決めるに困るんですけどね」
[屋上] 南条光 : 「……………」
[屋上] 南条光 : 「そんなことない」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…そうです?」
[屋上] 南条光 : 「あたしは茜さんと一緒にいれて楽しいから。茜さんが辛そうにしてると辛いから」
[屋上] 南条光 : 「あたしは、茜さんに死んでほしくなんかない」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…んー」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…そうしてやれたらええけどなあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ううん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチ南条になんかしてやれたっけ?」
[屋上] 南条光 : 「聞いてほしいんだ、茜さん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「おん」
[屋上] 南条光 : 「あたしね、仕事の方忙しくて学校の方あんまりしっかりやれてないんだ」
[屋上] 南条光 : 「だからずっと、学校に憧れがあった」
[屋上] 南条光 : 「勉強もそうだけど、それが一番じゃない」
[屋上] 南条光 : 「好きな人と一緒にいて、色んな事喋って、笑いあって。学校でやる、そんな事にずっと憧れてた」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…へぇ」
[屋上] 南条光 : 「そんな事、あたしが実現するのは無理だと思ってた」
[屋上] 南条光 : 「忙しくて、学校とあまり向き合えてないから」
[屋上] 南条光 : 「でも違う、あたしでも実現できるんだって。そう思えた」
[屋上] 南条光 :
[屋上]
南条光 :
「茜さんが、いてくれたから」
[屋上] 南条光 :
[屋上] 南条光 : 「学年も違う茜さんが、ろくに学校と向き合えてないあたしにやさしくしてくれたから」
[屋上] 南条光 : 「茜さんと一緒にいてずっと楽しいから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「そりゃま」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチはそれしか知らんからな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なあ」
[屋上] 南条光 : 「うん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチに憧れちゃいかんよ」
[屋上] 琴葉 茜 : にこりと笑い
[屋上] 琴葉 茜 : 「みんなのヒーロー」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ヒーローで、アイドル」
[屋上] 琴葉 茜 : 「挫けても立ち上がって、星を目指して」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…テレビで見たことあるわ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「まあ、やから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチと仲良くなっちゃダメや」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…ウチは悪い奴やから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「怪人とちがって、法で裁けるワルモノや」
[屋上] 琴葉 茜 : 「だから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「忘れや」
[屋上] 南条光 : 「……あたしの好きなヒーローの中にね、ちょっと変わったものがあるんだ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ほん」
[屋上] 南条光 : 「そのヒーローは見た目はもう、本当に日本でよく見るようなかっこいいヒーローなんだ」
[屋上] 南条光 : 「でもね、普通じゃ全然想像できないような相手と向き合ってるんだ。そのヒーローは」
[屋上] 南条光 : 「生身の、人間の犯罪者と、向き合い続けてるんだ」
[屋上] 南条光 : 「罪を犯した存在と。」
[屋上] 南条光 : 「でも罪を犯した存在であっても、そうなってしまった理由や原因があるから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「へえ」
[屋上] 南条光 : 「その相手を、救うために戦い続けてるんだ」
[屋上] 南条光 : 「そんなヒーローだって、いるんだよ。実際に、本当に」
[屋上] 南条光 : 「あたしは、」
[屋上] 南条光 : 「茜さんの助けになりたい」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「じゃあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ヒーローさん」
[屋上] 南条光 : 「うん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチの罪」
[屋上] 琴葉 茜 : 「しっかり裁いて欲しいんや」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチ一人じゃ出来へんから、多分逃げるし」
[屋上] 南条光 : 「その裁きが、今のあたしにできる事なら、やる。絶対」
[屋上] 南条光 : 「もしそれが今あたしにできない事だとしたら………、」
[屋上] 南条光 : 「──ずっと側にいる」
[屋上]
南条光 :
「茜さんが向き合いたいと思うのなら、向き合えるようになるまで、ずっと側にいる」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 南条光 : 「絶対に見捨てないから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「じゃ」
[屋上] 琴葉 茜 : ポッケからくしゃくしゃの地図を取り出して
[屋上] 琴葉 茜 : 光に投げ渡す
[屋上]
南条光 :
「……よっと」
しっかりと受けとる。
[屋上] 琴葉 茜 : 「丸の場所」
[屋上] 琴葉 茜 : 「埋めとる」
[屋上] 琴葉 茜 : 「警察さんによろしゅう」
[屋上] 琴葉 茜 : そのまま、鞄を背負う
[屋上] 南条光 : 「………うん」
[屋上]
南条光 :
「……行ってくるね」
[屋上] 南条光 : 「…………茜さん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ああ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なんや」
[屋上] 南条光 : 「あたしはね」
[屋上] 琴葉 茜 : 「うん」
[屋上] 南条光 : 「茜さんの事が好き」
[屋上]
南条光 :
「だから、」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 南条光 : 「茜さんのが罪に向き合いたいなら、向き合うのなら、あたしはずっと茜さんを待ち続ける」
[屋上] 南条光 : 「茜さんが、戻ってこれる居場所になる」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…そりゃいかんよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なあ、南条」
[屋上] 南条光 : 「うん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「世間は優しくないよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「人は優しいもんちゃう」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチはなあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「好きやったよ、南条のライブ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「やから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「見れなくなるのは、嫌やなあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「だから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「他人で居てほしい、な」
[屋上] 南条光 : 「………約束する」
[屋上] 南条光 : 「だったらあたしは絶対に今より、ずっと強くなる」
[屋上] 南条光 : 「そんなのに負けないくらい、強くなる」
[屋上] 南条光 : 「茜さんが帰ってくる時、そんな茜さんを受け止められる程に」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…期待はせーへん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「そうなってほしくないから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…じゃあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「さよなら」
[屋上] 南条光 : 「何があっても」
[屋上] 南条光 : 「絶対に待ち続けるから」
[屋上] 南条光 : 「あたしは進み続けるから」
[屋上] 南条光 : 「絶対」
[屋上] 琴葉 茜 : 返事はしない
[屋上] 琴葉 茜 : そのまま、屋上を降りて
[屋上]
蕪羅亭 魔梨威 :
「なあ」
階段の踊り場から姿を出す
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : なんや、聞いとったんか
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「本当にいいのか?」
[屋上] 琴葉 茜 : 「本当って」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチはいつか捕まります」
[屋上] 琴葉 茜 : 「本当にいいなんて、他にあります?」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「捕まらねえかもしれねえだろ。警察なんて案外適当なもんだ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「昔あたしの喫煙がばれなかったみたいにな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「でも、もしもがあれば」
[屋上] 琴葉 茜 : 「光が大変ですわ」
[屋上] 南条光 : 「…………」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチは身寄りも何もないガキです、売りもんは身体だけやから、別に問題ないです」
[屋上] 琴葉 茜 : 「光は違う」
[屋上] 琴葉 茜 : 「釣り合いませんわ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「逃げんのか」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「逃げる、ですか」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「さっきまでのらりくらり、そのままでいいやなんて言ってたやつにしては信じられないぐらい潔いからな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ん…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なんか」
[屋上] 琴葉 茜 : 「敵いませんわ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチは、正直」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチだけならどうでもええんですよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「でも」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…皆んなええ人ですよね、ほーんと」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチは」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…敵わんよ…」
[屋上] 南条光 : 「………茜さん」
[屋上] 琴葉 茜 : 振り向かない
[屋上] 南条光 : 茜の元へ歩く。
[屋上] 琴葉 茜 : 振り向かない
[屋上]
南条光 :
小さな体で、茜を抱き締める。
抱き止める。
[屋上]
南条光 :
「そうやって、あたしの事を思ってくれる、そんな茜さんだから、あたしは」
[屋上] 南条光 : 「茜さんの事が好き」
[屋上] 南条光 : 「そんな茜さんだから、私はいつまでも」
[屋上] 南条光 : 「待っていられる」
[屋上] 南条光 : 「茜さんが帰ってくる日まで、ずっと」
[屋上] 琴葉 茜 : 「………」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なぁ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチ」
[屋上] 南条光 : 「茜さんが帰ってこれるように、あたしも前に進める」
[屋上] 琴葉 茜 : 「どうすればよかったんやろ」
[屋上] 琴葉 茜 : 声が震える
[屋上] 琴葉 茜 : 「…なんか、なんで」
[屋上] 琴葉 茜 : 「諦めてもらえへんのや」
[屋上] 南条光 : 「……よくたくさんの大人から聞かされるんだけどね」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 南条光 : 「学校生活ってね、かけがえのない大切な物なんだよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…うん」
[屋上] 南条光 : 「だからあたしは、それを大切にしたかった。でもあたしじゃ無理だと思った」
[屋上] 南条光 : 「けどね、茜さんがいてくれたから、それが不可能じゃないって気付けた。……ううん」
[屋上] 南条光 : 「茜さんがいてくれたお陰で、かけがえのない物になったんだよ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ウチは」
[屋上] 琴葉 茜 : 「誰に責任取りゃあええんよ…」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「……責任を取らねえって手もあるけどな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 南条光 : 「責任を取りたくて、それでも取り方が分からないなら」
[屋上] 琴葉 茜 : 「取らへん、て」
[屋上]
蕪羅亭 魔梨威 :
「その前に、これ没収な」
茜から煙草を奪い火をつける
[屋上] 琴葉 茜 : 「んあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上]
南条光 :
「しっかりと償って、考えて」
「すぐには出ない、難しい事だから」
[屋上]
南条光 :
「………どうしたらいいのか、だったね」
話を戻す
[屋上] 南条光 : 「……わからない。それにわかった所で、もう終わった事だから」
[屋上]
南条光 :
「それでも知りたいなら、」
[屋上]
南条光 :
「帰ってきた時、あたしに話して」
[屋上]
南条光 :
「一緒に、考えるから」
[屋上] 南条光 : 「ずっと付き合うから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「『お目こぼし』、私と口裏合わせてアリバイ作ればなんとかなると思わねえか」
[屋上] 南条光 : 「絶対に、待ち続けるから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「………」
[屋上] 南条光 : 「責任だってそう」
[屋上] 南条光 : 「もし償ってる間に、答えが出なかったら」
[屋上] 南条光 : 「帰ってきた時、あたしも一緒に考える」
[屋上] 琴葉 茜 : 「……」
[屋上] 琴葉 茜 : 「……なあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「……」
[屋上] 南条光 : 「うん」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「ああ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…こんな、情けないこと言うのは、悪いけど」
[屋上] 琴葉 茜 : 「どうすりゃええかなんて、わからん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「だから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…先に、一緒に考えてもらうんは」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ダメやろ、か」
[屋上] 南条光 : 「あたしは、茜さんがしたいならそのつもりだよ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「いいんじゃねえか?結局本人が決めることだが」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…すまん、すまんな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「……」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…おね、がい、や」
[屋上] 琴葉 茜 : ぼろぼろ、涙を零し始めて
[屋上]
南条光 :
「うん……」
しっかりと茜を抱き締める。
[屋上] 琴葉 茜 : 「……」
[屋上]
琴葉 茜 :
「…あはは」
力が抜けて、ヘラヘラ笑う
[屋上]
南条光 :
「大丈夫…」
そっと、ささやく。
[屋上] 琴葉 茜 : 「…生きてて良かったんか、生き過ぎてたんか、もーわからん、のに」
[屋上] 琴葉 茜 : 「なんか、幸せや…」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「自分は許せたかい」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…わからん、けど」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…気はマシや」
[屋上]
南条光 :
「うん……」
抱き締めた背中を、そっと撫でる。
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「そりゃよかった。煙草は吸える年齢になったら返してやるよ、じゃあな」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…あんがとさん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「またな、センセ」
[屋上] 蕪羅亭 魔梨威 : 「おう、また明日」
[屋上] 琴葉 茜 : 「……」
[屋上] 南条光 : 抱き締めた腕をほどき、今度は茜の両手をそっと握る。
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 南条光 : 茜の顔をまっすぐ見つめる。
[屋上] 琴葉 茜 : 「南条…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…あんがとさん」
[屋上] 南条光 : 「こっちこそ、力になれたなら嬉しい」
[屋上] 南条光 : 「……茜さん」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「ああ」
[屋上] 南条光 : 「あたしはね、強いんだよ。今でも」
[屋上] 南条光 : 「だって今の時点でもう、大人気アイドルだから」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…はは、せやな」
[屋上] 南条光 : 「それにその人気だってまだ全然止まってないんだ」
[屋上] 南条光 : 「だから帰ってきた時には、あたしはもっと強くなってるよ」
[屋上] 南条光 : 「それにね、」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…うん」
[屋上] 南条光 : 「茜さんと一緒にいたお陰で、不可能だと思ってたことだって乗り越えたんだ」
[屋上] 南条光 : 「茜さんがいたお陰で、学校生活があたしの中でかけがえのないものになったから」
[屋上] 南条光 : 「これは何度も言ったけど、嘘じゃないよ。また言うね」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…あんがと」
[屋上]
南条光 :
「あたしは絶対に強くなる」
「ずっと待ってる。茜さんが帰ってこれる場所になる」
「帰ってきた後でも悩んでることがあったら、あたしもずっと側にいて考える」
[屋上] 南条光 : 「茜さん、あたしはあなたを」
[屋上] 南条光 : 「愛してる」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…っ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「そない言われて」
[屋上] 琴葉 茜 : 「断る奴は…おらんよ」
[屋上] 琴葉 茜 : くすり、笑って
[屋上] 琴葉 茜 : 「…」
[屋上] 琴葉 茜 : 「…じゃあ」
[屋上] 琴葉 茜 : 「帰ろっか」
[屋上]
南条光 :
「…………」
涙が顔を伝う。
自分でもそれに気づいてない。
だけどその顔には、優しい笑顔が浮かんでいた。
[屋上] 南条光 : 「…うん!」
[屋上] 琴葉 茜 : …そのまま
[屋上] 琴葉 茜 : 今度こそ、降りて
[屋上] 琴葉 茜 : 学校から、去っていった
[屋上]
南条光 :
茜をしっかりと信じて
その遠ざかる背中を見送った。
[屋上] 南条光 : 少し経って、南条光も
[屋上] 南条光 : 前へ向かい、歩き出した。
[屋上] 南条光 :
[屋上] 南条光 :
[屋上] 南条光 :